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最近のドイツの状況
1.洪水対策が功を奏したシュレーダーだが・・・
ドイツでは昨秋9月22日,連邦議会(Bundestag;下院)議員選挙が行われた.4年ごとに行われるものであるが,選挙戦を通じてG.シュレーダー(首相)率いる「社会民主党(SPD)危うし!」の下馬評が飛び交う,緊張感あふれる 政局秋の陣" となった.開票の結果,シュレーダー首相は薄氷を踏みながらも2期連投に向け辛勝を果たした(表1).とはいうものの,得票率でみる限りSPDは「独り負け」(今回38.5%,前回1998年は40.9%)を喫した.というわけで,シュレーダーは引き続きBündnis'90/Grüne('90年連合/緑の党)との連立を維持しながら政権を握ることになった.
周知のようにヨーロッパ諸国ではこのところ保守勢力の台頭が目立つが,「ドイツで初のメディア対応型首相」の異名をとるシュレーダー氏が終盤戦に至って“大ワザ”を賭けて出たことが接戦勝利を決した要因とみられる.実際,テレビ画面を通じて映し出される党首討論では,終始,ウイットに富んだシュレーダーの饒舌ぶりと自信に満ちた迫力が浮きぼりとなった.
また,今世紀最悪の洪水(2002年8月,ザクセン州・エルベ川沿いを中心に発生.千年に1度の規模)に見舞われた旧東ドイツ地域に作業服姿で訪れ,被害者を元気づけるシュレーダーの姿が大写しにされた新聞や雑誌を見るにつけては,マスコミを操る飛び抜けた能力の高さを改めて知らせしめる好機を彼自身が巧みに演出してみせたものといえよう.実際,洪水被害地で俊敏かつ精力的に振る舞うシュレーダーを見て,多くの市民が信頼と期待の度合いを高めたことだけは確かである.
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