- 有料閲覧
- 文献概要
- サイト内被引用
上尾中央総合病院では,今から 7 年前の 1999 年より,接遇の向上に取り組んでいる.今でこそ,医療もサービス業の一つとして捉え,接遇教育に取り組んでいる医療機関が増えているが,その当時,主任であった筆者は,「接遇」という言葉の意味さえ知らず,患者と直接係わる現場の責任者として,院内で初めて開催された接遇研修に参加した.ちなみに「接遇」とは,顧客を礼儀作法に従ってもてなし,歓待する考えから生まれた概念である.もともと中途入職者であった筆者にとっては,病院内の患者と医療者側との奇妙な関係に疑問を持っていた.例えば,社会的に地位のある人が,患者となった途端に弱者となり,反対に,医師,看護師,事務職までもが患者に対して見下すような関係となっていたのである.“ゆでガエル” という言葉を耳にしたことがあるだろうか.この接遇研修(のちに紹介する)を主催した徳永英吉(当時,接遇委員会委員長:現院長代理)から聞いた言葉である.蛙(カエル)はゆであがった鍋では,熱湯ですぐに気づき,鍋の外へ飛び出す行動をとるが,水の状態から少しずつ鍋を熱した場合,蛙は鍋の熱に慣れてしまい,温度の変化に気づかず,“ゆでガエル” となってしまい死んでしまう.この話は,心理学の分野で「ベイトソンのゆでガエル」と言われる有名な実験であると後々学んだが,今では様々な分野で比喩として使われているものである.要するに,患者と医療者側との奇妙な関係が日常化してしまい,その関係に疑問を持たなくなってしまうということである.
本稿では,当院の接遇への取り組みを実際に経験し,実務を担当した中間管理者の立場から,具体的な事例や問題点,今後の課題を含め紹介していきたい.
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.