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「医療はサービス業である」との認識を今や多くの患者や医療従事者が持っている.しかし本当にそうなのか,患者の要求レベルは他のサービス業(例えばホテルなど)を利用する時の要求と同水準なのかというと,決してそうではない.
患者は,治療を第一目的に通院や入院をする.そのため,たとえよい入院環境でなくてもあまり文句を言わない.だからといって劣悪な環境やサービスでよいのであろうか.
現在多くの病院では,大部屋中心の入院療養体制で,個室というと非常に贅沢な環境のように聞こえてしまう.
果たしてそうなのか.仕事などでホテルを利用するときは,たとえ新入社員でも当たり前のように個室に泊まるが,病院に入院するとなると個室は贅沢と言われてしまう.
入院療養を行ううえで,ストレスや不安をできるだけ払拭し,安らぎの環境を提供することも非常に重要なことである.そして,その環境にサービス提供体制のシステムが加わり,本当の安らぎを与えられるのではないだろか.
病院での入院生活には様々な規制がある.しかし,その多くが病院側の都合で規制していることに患者は気づいているのであろうか.
手術の前の日などは,不安で眠れない患者も多い.そんな時,家族がそばにいて一緒に寝てあげられればきっと不安も安らぐだろう.
また,仕事をしている家族は夜しか面会に来られない方もいる.それならば,いつでも面会できるように仕組みを作ればいい.これらは個室化することで簡単に解決できるのである.
一方で,診療記録の取り扱いについてはどうであろうか.これからの医療は「病院が勝手に治療方針を決定し,患者はそれに従う」という関係では質の高い良い医療を行うことは不可能である.
現在では多くの治療方法や術式などがあり,患者はそれぞれのメリットやリスクを十分理解したうえで患者自身が選択することになる.平成13年に出された厚生労働省の保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザインでも「21世紀の医療提供の姿」として患者の選択の尊重と情報提供と書かれており.その中では
・患者の視点の尊重と自己責任
・情報提供のための環境整備 とある.
これらの実現のためにはまず患者が自分の病気に対し,正確に理解し医師と対等に話ができなければならない.
本稿では,筆者の勤務する亀田メディカルセンターの入院環境についての改善と医療情報提供を実現した医療情報ネットワークについて報告する.
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