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■プロローグ
2000年8月10日.病院正面玄関脇で日本第一号となる24時間営業病院内コンビニエンスストア(以下コンビニ),ローソン恵寿総合病院店のテープカットが賑々しく執り行われた(写真).
これまでの売店は平日が午後5時,日曜は午前中で閉店していた.そのため利便性の面から寄せられる入院患者や外来患者からの売店の営業時間の延長要望は言うにおよばず,不測の救急入院の際における日用品の準備や重傷者の付き添い家族などに対する飲食物の提供を求める要望などが多数寄せられ,その対応が迫られていた.
これらの要望からわれわれは「売店改革」に腰を上げたのだった.当初,既存の売店業者との間での営業時間延長交渉を粘り強く行ったものの収益性という点で物別れに終わった.そこで,営業時間延長というよりは,24時間営業の業態を誘致するという逆転の発想に変わった.しかし,約70m2と通常のコンビニにおける所定面積の3分の2の広さしか確保できないこと.バリアフリー化のための自動ドアや通路の確保が必要なこと.また,フランチャイジーは誰がなるのかなど,本来的には本部主導で徹底した規格化,共通オペレーションというコンビニ業態の基本戦略をも覆してしまうようなコンセプトに,コンビニ本部も二の足を踏んだ.それでも,われわれのラブコールからかなり強引に「開店させた」のが実態であったと言える.いわば,コンビニ本部にしてみれば,鬼っ子的存在だったのである.
開店後は誰も予想もしない事態が発生した.当時1日1,000人の外来患者,400人の入院患者や急患需要だけではなく,24時間病院を守る職員の冷蔵庫的役割を担い,さらには近隣住民が多数押し寄せ,売り上げは小面積にもかかわらず地域一番店となってしまった.それからというものは,コンビニ本部の役員の視察が相次ぐこととなった.そして新しいビジネスモデルとしての「病院コンビニ」が全国展開されていくことになるのであった.
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