本の紹介
リハビリテーション医学講座第9巻 「障害と心理」―三沢義一著
石井 理恵
1
1東京大学医学部付属病院
pp.715
発行日 1985年10月15日
Published Date 1985/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103428
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まずこの本のタイトル“障害と心理”に注目して頂きたい.このコンパクト・テキストに書かれてあるのは,障害者の心理でもなく,障害の心理学でもなく,障害・と・心理なのである.著者の障害と心理観は,終章において教科書の枠を越えて説得力あるプロットで語られている.読者を感銘させずにはおかないであろう.
私事を書かせて頂くが,作業療法士として所謂障害者・児と関わるようになり数年の間,治療者の立場で知らねばならない障害者の心理とは,障害の心理学とは何なのかと教科書を捜したことを思い出す.ピンと来る書物に出会えぬまま年数を経るうちに,どうやら障害者の心理と言えるようなものは存在せず,障害者に対する時の人々の心理があるのみではないかと考えるようになっていた.障害者と健常者とを区別するものは法の施行の場合に限って存在するのみではないかと.それ故,今,この本において,長年この分野で実践的研究を続けておられる著者の説得力ある論述を得て,深く共感される方が沢山おられると思うのである.
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