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書評 本来の医療を取り戻すために:一日で学べる医療法学―大磯 義一郎,加治 一毅,山田 奈美恵(著)『医療法学入門』
渋谷 健司
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1東京大学大学院医学系研究科 国際保健政策教室
pp.126
発行日 2013年2月1日
Published Date 2013/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102455
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昨今,医療訴訟や紛争のニュースを目にしない日はない.しかし,多くの医療従事者はそれらを人ごとだと思っているのではないか.実際,「法学」と聞くと,たちどころに拒否反応を起こす医療従事者も少なくないだろう.われわれは,ジョージ・クルーニー扮するTVドラマ『ER』の小児科医ダグ・ロスのように,「目の前の患者を救うためには法律など知ったことではない」というアウトロー的な行動に喝采を送る.医療訴訟,そして弁護士と聞くと,常に前例や判例を持ち出す理屈屋,医療過誤で儲ける悪徳野郎といったイメージが浮かぶ.医師兼弁護士などは資格試験オタクだ.しかし,この『医療法学入門』は,法学に対するそうした浅薄な先入観をいとも簡単に裏切ってくれる.
医師であり,弁護士でもある著者らの医療従事者へのまなざしは,寄り添うように温かい.本書は,よくある判例の羅列や味気ない法律の条文の解説ではない.各章が明快なメッセージで統一されて書かれているので,上質のエッセイを読むかのごとくページが進む.序文にある著者らの決意表明が心地よい.増え続ける司法の介入に対して,「何よりも問題なのは,医学・医療の知識もなく,医療現場に対し何等の責任もとらない刑法学者等が空理空論で“正義”を振りかざしたこと」であり,「医療を扱う法学は実学でなければ」ならず,「医療を行う医師,医療を受ける患者という生身の人間から離れず,多数の制限下において現実に行われている医療現場から規範を形成する『医療法学』こそが必要」だと説く.
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