今月の主題 腎移植
巻頭言
国内外にみる腎移植の現状と将来
太田 和夫
1
Kazuo OTA
1
1太田医学研究所
pp.725-727
発行日 2008年7月15日
Published Date 2008/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101638
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わが国における臓器移植はアジアで最も早く1964年に開始され,その後,日本の各地で症例が経験された.しかし1967年12月には,南アフリカで行われた心臓移植に端を発した脳死の問題がクローズアップされてきた.翌1968年には札幌医大でいわゆる和田移植が行われたが,死の判定に疑問が出され,以後,わが国での心臓移植はほとんど行われなくなる事態を招くことになった.これに対し,1990年にはようやく脳死臨調が組織されていろいろ議論が戦わされた結果,脳死者からの臓器提供が是認され,実際に脳死段階における臓器提供が行われるようにはなった.しかしそれはごく少数にとどまり,現在でもなお家族が臓器を提供する生体腎移植がその中心となっているのが日本の実情である.われわれは国際的な死体腎移植のレベルに近づこうと努力を重ねているのであるが,なかなかそこまで到達しないのが現状と言えよう.
それでは,まずわが国における生体腎・献腎による腎移植の現況をご紹介するとともに,海外の現況にも触れつつ,併せて腎移植における臨床検査の重要性についても強調しておきたい.
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