プログレス
骨形成促進への電気の利用
酒匂 崇
1
1鹿児島大学医学部整形外科
pp.121
発行日 1985年2月15日
Published Date 1985/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518103267
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骨に電流を流すと,骨形成が促進される事実が近年明白になり,偽関節や遷延治癒骨折の治療に電気刺激が広く応用されつつある.電気刺激と骨形成促進の関係について報告したのは,1952年本邦の保田氏が最初である.すなわち,犬の生骨の一端を固定して,他端に荷重を加えると骨に電気が発生することを発見し,これを骨の圧電気現象piezoelectricity of boneと名付けた.この圧電気は骨の膠原線維の歪みにより電位差を生じ,電流が発生すると言われている.彼は,力学的な刺激が骨に加わると骨は増殖し強度を増し,また骨折で力学的刺激を加えると仮骨形成が旺盛に見られることより,力学的刺激が電気を発生し,この電気が仮骨を形成するのではないかと考えた.以上の理由より,実験的に微弱な直流電流を骨に流し刺激した結果,陰極の周囲に顕著な仮骨形成を認め,これを電気仮骨と名付けた.
初めて偽関節に電気刺激を行い,骨癒合に成功したのはFriedenberg (1971)であり,脛骨顆部の偽関節に刺激針を挿入し,微弱直流を連続的に流した.Brightonは多くの偽関節症例に経皮的にK-wireの陰極針一本につき,20μAの直流を流し刺激した結果,3ヵ月の時点で178例の約84%に骨癒合の得られたことを1981年に報告し,偽関節手術に代わり得るものであるとしている.
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