プログレス
精神科領域におけるリチウム療法
渡辺 昌祐
1
1川崎医科大学精神科学教室
pp.403
発行日 1983年6月15日
Published Date 1983/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102873
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リチウムは一価の陽イオンであり,生物の体内には痕跡的にしか存在せず,生理作用も不明である.このNa,Kに類似したリチウムが,躁病の治療剤として精神神経科領域で脚光を浴びている.その理由としていくつかの点が考えられるが,単純なリチウムイオンは今まで治療剤として用いられてきた抗精神病薬とは全く異なる物質であること,躁病のみならず一部のうつ病や,躁病とうつ病の予防効果が認められる,言いかえると,感情の調整剤として働く点などであろう.そして,リチウムの作用機序を研究してゆけば躁うつ病の病態解明への足がかりになる可能性を含んでいると考えられるからである.
臨床的にリチウムを用いる場合にも大きな特色がある.それはリチウムの血中濃度を測定しながら薬剤の投与量を調整することが大切なのである.リチウムは精神科治療において薬剤の血中濃度測定の技術料が保険診療に認められたことからも事情がよく理解されよう.
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