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特集 リチウムの臨床と基礎—最近の話題
リチウムの副作用・中毒—腎機能
Lithium Therapy and Kidney
江原 嵩
1
,
渡辺 昌祐
2
,
大月 三郎
1
Takashi Ehara
1
,
Shosuke Watanabe
2
,
Saburo Otsuki
1
1岡山大学医学部神経精神医学教室
2川崎医科大学精神医学教室
1Dept. of Neuropsychiatry, Okayama Univ. School of Medicine
2Dept. of Psychiatry, Kawasaki Medical School
pp.167-176
発行日 1982年2月15日
Published Date 1982/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203378
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I.はじめに
リチウム塩は,躁うつ病急性期の治療の第1選択薬としての地位を揺るぎなきものとしているが,近年,情動疾患の予防療法薬としての脚光も浴びている27,72)。予防療法は年余にわたるものである故に,特に副作用についてはきめ細かな臨床的観察と基礎的研究が要求されることは言うまでもない。リチウム塩の副作用は,中枢神経系,消化器系,循環器系,内分泌器系,造血機能系はもちろんのこと,腎系を含めた全身の諸器官に及ぶことが知られている1,72)。
腎臓に及ぼすリチウムの作用としては,リチウム過投与,過蓄積による中毒状態での急性腎不全症状は,最重症の腎系副作用として熟知されると同時に,最も恐れられているものの1つである。治療的リチウム濃度内においても,投与初期に見られる多尿症や,維持的リチウム濃度内での多尿症も軽症の腎系副作用としてよく知られている。予防療法のごとき極めて長期間のリチウム服用により,もし潜在的な腎機能低下が進行的に発生しているならば,リチウム予防療法は極めて危険なものとなり予防療法の継続中止を余儀なくさせるものであり,さもなくば,予防療法におけるリチウムの投与量や投与方法などの技術的方法論を再考させるものとなる。
それ故,本展望においては,中毒状態における腎系の臨床症状,腎機能,腎組織病理所見は言うに及ばず,とりわけ,予防療法非中毒状態での腎系の臨床症状,腎機能,腎組織病理所見について文献的に考察し,予防療法におけるリチウム投与量や臨床検査的観察について検討した。
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