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はじめに
慢性関節リウマチ(RA)は原因不明の疾患である.したがって,薬も結核に対するストレプトマイシンのように,その病気の原因をとり除くことによって病気を治すと言う,いわゆる原因療法に相当する薬はない.ただ昔からRAに有効であると経験的に知られている幾つかの薬があり,また近年開発の著しい非ステロイド抗炎症剤や免疫調節剤の登場もあり,これらを組合せて対症的に治療することにより患者の苦痛を和らげ,運動機能訓練やリハビリテーションの施行を容易にし,関節の変形を防いで家庭生活や社会生活遂行上のハンディキャップを少なくすることがRAの薬物療法の主たる目的となる.
RAは症例によって症状の軽重の差が甚だしく,また病勢の自然経過も著しく異なるため,治療法もケースバイケースで画一的にいかないのが常である.疾病の完全治療が期待できる発病早期にあっては,副作用の危険を冒しても寛解導入を目的とした強力な薬物療法を行うのが正しいと考えられるが,一方発病後数年を経過し,その間再然を繰り返して疾患の完全治療が期待できない状況にあっては,病気を治すと言うよりはむしろ患者の日常生活のニードに合わせて病気をコントロールすることを目標とした対症的薬物療法もまた重要な意義をもつと考えられる.
RAの治療薬としてまず最初に使用されるのはアスピリンおよびその他の非ステロイド抗炎症剤で,鎮痛と抗炎症を兼ねた基礎療法剤であるところから,これらの薬剤をRA治療の第1次選択剤と呼んでいる(表1).第1次選択剤は副作用が軽微で安全性も高いが,活動性RA病勢の寛解をもたらすほど強力な治療剤ではない.
これに対し,鎮痛作用などの直接効果はないが,遅効性で活動性RA病勢の寛解導入を目的として使用される薬剤を第2次選択剤と言い,金,Dペニシラミンや抗マラリア剤がこれにあたる.このグループの薬剤は,寛解を導入できるほど強力である反面,重篤な副作用も多く,得られる効果と副作用による損失を天秤にかけながら慎重に使用されねばならない.
第三のグループは,副腎皮質ステロイドや免疫調節剤を含む群で,第3次選択剤と呼ばれ,第1,2次選択剤でコントロールできない難治例に用いられる.ことに免疫調節剤は,副作用も重篤なものが多く,効果の方もいまひとつ確実性を欠いており,ある意味ではまだ試験的使用の段階にある薬剤と言い得る.
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