精神科作業療法
“おしゃれをしたいから働きたい”という一念で社会復帰訓練を体験している症例報告―精神科作業療法ケース・カンファレンス報告より
宮崎 和子
1
1世田谷リハビリテーションセンター
pp.603-607
発行日 1981年6月15日
Published Date 1981/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102428
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Ⅰ.はじめに
1.ケース概要
ここに紹介する症例は,小学6年生頃から学校不適応,家庭内暴力が始まり,ついに中学1年(12歳)で被害関係妄想,幻聴・無為自閉状態で精神科を受診.その後4回の入退院を繰り返し,19歳になって4回目の退院と同時に当センターのデイ・ケア部門に通所し始め,2年半になる.今なお社会復帰を目ざして訓練に励んでいる22歳の女性である.
当ケースのように10代で初発の分裂病者は,経験上からも他例にもれず社会適応は困難である.その理由の大部分は人格面の未成熟であるといえよう.人格形成に重要な時期に幻聴・妄想に蝕まれ,その発達・成長を阻害されて大人になる.病状面は比較的安定しても,なかなか社会的自立がむつかしい.
他者の些細な言動で興奮し,相手かまわずののしってみたり,“いじめる人がいる,目つきの悪い人がいる.ぶっ叩いてやる”と強がりを言う反面,しかえしが恐いと,何時のまにか家に逃げ帰ってしまう小心な面とが同居していたりする.最大の難点は新しい経験に不安・緊張が強く,非常に敏感でなかなか慣れないことである.通所を決定するまで,また担当者になれるまで,実に長い時間を要したのもその一例に過ぎない.
この症例が,多数の利用者に支えられ,外来者(非常勤講師,実習生,研修生など)にも暖かく見守られながら,どのようにして社会に出て行ったか,若年期発病で人格面の発達の機会に恵まれなかった部分がどう変化して行ったか,このあたりに焦点をあてていきたい.同時にデイ・ケア活動・運営を紹介し,なかでもケース検討会の方法・意見なども報告したい.
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