病院を考える・9
他人の芝生は緑に見える
紀伊国 献三
pp.81-84
発行日 1969年4月1日
Published Date 1969/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541203623
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お手本としてのアメリカ
"アメリカ医療の問題点"と題して,雑誌タイムは,現在のアメリカ医療のかかえる問題点を特集している(2月21日号).ジャーナリスティックとの批判はもちろんされようが,興味深い点も少なくない.報告はまず,"アメリカ医療は世界一"という考えは,もはや神話でしかなく,現実は問題が山積しているとし,年間530億ドルというから,19兆円もの総医療費を費消しながら,その医療費に値するだけのよい医療を受けているのは,人口の25%にすぎず,残りのうち50%がかろうじての合格点,残った25%は弁解の余地のないほど悪質か,または全然医療の提供を受けていないとしている.
この報告は,割り引きをしても,わが国の大部分の医療担当者のいだくアメリカ医療のイメージとは,だいぶへだたりがあるようである.わが国では,終戦後の占領軍の影響が強かったせいか,医療,特に病院における医療に関しては,アメリカのやりかたが1つのモデルとなっている.医療だけにかぎらず,他の面でもみられるかもしれぬが,なにかわが国での問題点に対する解決策は,すぐにアメリカのやりかたに求められ,到達目標としていつもおかれてきた.そこには,合理性に裏づけられたアメリカ医療の進歩に,信仰めいたものが感じられるほどである.
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