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はじめに
歩行器や杖は歩行補助具として古くから用いられ,主として下肢の筋力低下,体重の免荷,平衡障害などの障害者で,一般に上肢機能障害のない障害者を対象としてきたが,その後,種々の物が開発され,手指,肘などの機能障害をもっている障害者にも適用されるようになって来ている.そのため用途は非常に拡大されてきた.
現在適応している障害の中で最後まで満足すべき結果を得られず悩まされている疾患は高度の失調症(不随意運動)とリウマチである.前者では歩行器への要求が多面的機能でその機能を満たす歩行器がない.一般の障害者は体重を支えるという一方向性への支持力で,その目的を十分達成し得る,使用する側もその目的的に使用することが殆んど可能である.失調症の場合は使用する側が目的的に使用するようにcontrolすることが困難で,あらゆる方向への支持性と安定性を要求する.これに応えるだけの機能を具備することが困難なためである.
リウマチの場合は軽量化と相反することが必要で即ち,高度な障害を持っている者ほど,歩行を可能にするためには,多くのアクセサリーを装備しなければならず,重量が増し,歩行補助具の自重が負荷量の増大を招き歩行不可能となる場合がある.故に如何に支持力を単純化し安全に使用できるようにするかが大きな課題となる.
臨床場面で良く遭遇することだが,意識障害や知的レベルの低下を来たしていない障害者に“何んとか歩きたい”,“歩けるようになるでしようか”と良く尋ねられる.それだけ人間にとって歩行ということの意義がどれ程のものであるか計り知ることが出来ると思う.
そこで歩行が可能になればと願う障害者の目的だけを迎合し,我々PTの側からのcheckがおろそかになってはいないか,障害者のneedsと歩行補助具のfunctionをmatchさせる努力が大切である.
恒常的には歩行補助具の種類については,T型杖にするか,あるいはロフストランドクラッチにするかまでは障害者の能力を基準にして選択するが,例えばT型杖にしても,直接体重を受けている握りの型は色々な種類があり,太さ,形状,角度などを組合せると数種類のものが出来る,その内のどれにするかまでは選択の基準を拡大していないのではないだろうか.一つには杖の価格の問題もあると思う.木製で安いものは1200円位から金属性の物は1万数千円とその幅が大きいため,つい現在この種のものがあるからという安易な考えの基に与えているような気がする.この機会に我々はこの点を改める必要があると思う.そうすることが補助具の機能を高め適応範囲を拡大し,目的に応じた,より良い製品となって造り出されるものと信じる.
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