反省させられた症例
登校拒否症と慢性分裂病患者にかかわって
佐藤 陽子
1
1国立仙台病院附属リハビリテーション学院
pp.425-426
発行日 1980年6月15日
Published Date 1980/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518102172
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はじめに
「反省させられた症例」というテーマで,編集部より原稿を依頼された時,どこに焦点をしぼってまとめようかと一瞬とまどった.精神科患者の治療に作業療法士(以下OTと略)が関与してすっかりよくなったという実感はつかみにくい.精神医療ほど精神科医を中心としたさまざまな職種のスタッフ間のチームワークが重要なことはない.精神科医の精神医療に対する考え方や姿勢,看護に対するニードのあり方,病棟職員の精神科看護に対する理解度や業務内容など,それぞれの立場からの考え方の違いが患者の治療におおいに影響する.それに加えて新しい職種のOTが割りこみ,OTなりの治療方針もあり,それを生かそうとするとなお一層むずかしくなる.患者中心の治療ということで,会議が設けられているが,同じ土俵の上にはなかなか立ちにくい.微妙なくい違い,各職種相互間のコミュニケーションのまずさが患者に敏感に影響し,リハビリテーションを推進していく上での種々の問題をひきおこしている.患者を通して,それが時には反省させられた症例になってしまう傾向が強い.施設上の問題やスタッフ間のディスコミュニケーションから生じる患者へのアプローチの失敗は枚挙にいとまがない.ここでは一施設内における精神医療の様々のスタッフの医療に対する姿勢の違いから生じた症例と,OTの治療操作上の失敗から生じた症例の二例について,検討したい.
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