特集 家庭療育と自主トレーニング
<随想>
在宅療養のむずかしさ
牛塚 統六
1
1東京リハビリテーション福祉協会
pp.611-612
発行日 1979年9月15日
Published Date 1979/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518101983
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脳卒中でたおれて,今度の12月1日で丸16ヵ年になる.私も大方の卒中患者が辿る一般的障害プロセスを経験した.すなわち(1)急性期,(2)亜急性期,(3)慢性期,(4)恢復期である.(1)の時は,命がどうなるかわからない不安な時期である.私自身の気持ちは助かるかどうか,麻痺がひどくなるのではと,種々の不安から周囲を取りまく世界が急に縮少してただ自己中心的にしか考えられなくなり,極めて暗示を受け易く,依頼的になった.(2)亜急性期は,命はどうやら取り止めたと認識する段階である.他人に依頼的で,自分で出来ることでも他人を使いたがり,自分は病人だから,小便など他人が採ってくれるのが当然だと考え勝ちになる.(3)の慢性期は病気が良くもならず悪くもならずという焦りの時期である.障害を受けた身体的機能や社会的に失ったものに気をうばわれ,他のことにはトンと頭が廻らないのである.(4)恢復期にはいくら嘆いてもわめいても一度失われたものは仕方がないと悟り,自分にまだ失われずに残されているものに気がつく時期である.
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