巻頭言
精神科診断のむずかしさについて
三好 功峰
1
1兵庫医科大学精神神経科学教室
pp.634-635
発行日 1981年7月15日
Published Date 1981/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405203275
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近年,精神医学において疾患の分類や診断方式づくりが盛んにおこなわれている。セントルイスのワシントン大学を中心として作成されたアメリカ精神医学会(APA)の「精神障害の診断と統計のための手引き(DSM)」は第3版として1980年に改訂されているし,同じグループのFeighner(1972)やSpitzer(1974)などの「研究に際して用いる診断基準Research Diagnostic Criteria(RDC)」もできていて,これらの診断基準の信頼性の評価が主としてアメリカの雑誌に多くの論文として発表されている。またWHOの疾患分類は1977年よりICD-9として広く用いられ,内因性精神病の診断基準である現在症診察表PSEも1981年,長崎大,高橋良教授によって,わが国でも翻訳され紹介されたところである。
このような客観性をこころざした診断の基準づくり,その前に必要な診断名の整理,統一は,広く精神医学のために役立つことは間違いない。診断基準の統一がなければ疫学的調査や研究はなりたたないであろうし,世界的に盛んになりつつある生物学的な精神医学においても得られたデータについて比較のしようもないといったことになりかねない。
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