特集 新しいリハビリテーション医療器具
<随想>
人間と機械
荻島 秀男
1
1リハビリテーションペインクリニックわらび診療所
pp.539
発行日 1979年8月15日
Published Date 1979/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518101960
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人間の欲望には限りがない.より速く,より便利に,より快適に,未知の克服等ある意味では人間が楽をして,エンジョイし,挑戦するための工夫および追求がいわゆる文明と称せられているものの基本に流れているようである.鉱石の採掘を目的として開発されたダイナマイトが人類殺戮の道具として使用され始めた事を嘆き悲しみノーベル賞を設けたアルフレッドノーベルの話はあまりにも有名である.またチャーリーチャップリンのモダンタイムスは歴史的な名作であるが機械に振り廻される人間社会を痛烈に諷刺にしたシーンは現代社会における人間性の喪失を見事に画いていた.
リハビリテーションはチームワークにより医療サービスが提供されるのが特徴であると言われている.人間を月に到達させたロケットには400万種類以上の違った部品が含まれていたという事であるが,それらすべてが間違いなく働いてはじめて月到達が可能だったわけである.さらに二重にも三重にも安全装置が設けられていてセルフモニターを行いながら軌道の修正を行った事も知られている.チームワークと言葉でいうのは簡単であるが,どんな小さなパートであれ,その課せられた機能を充分に発揮しない限りチーム全体の機能も発揮されない.我々の医療チームを考えた場合,二重三重の安全装置が設けられているであろうかと疑問を持つと背筋が寒くなる.
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