--------------------
機械と人間
N
pp.35
発行日 1961年10月1日
Published Date 1961/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202213
- 有料閲覧
- 文献概要
20世紀の文明は機械の文明だと言われている.それは制度的には封建領主の苛酷な支配から逃がれて,人間性の復活を闘いとつた社会の中に,意図に逆らつて咲いた悪の花である.封建時代はそれでも牧歌的な面が生活の中に多かつたといえよう.生産手段は幼稚であり生産量も少なかつた.生活水準は低くとも,それに伴う生計費も安価であつた.
産業革命を契期にして社会の富は,生産量の増大と共に増加し,それに伴う人間の生活水準も高度に発展した.しかしその発展の蔭には,莫大な機械の運転の中に巻き込まれほんろうされている人間の哀れな姿が見出される.すなわち,今日では社会の輪転の主は機械であつて人間はその従僕にすぎない.封建領主の支配から逃がれて自由人を目指した人間も,今では再び機械の支配を受けている.しかも,支配者が人間でないだけにその支配も冷酷そのものになつている.
Copyright © 1961, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.