論壇
機械と人間
仁木 偉瑳夫
1
1京府医大臨床検査部
pp.1548-1549
発行日 1972年12月15日
Published Date 1972/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542907882
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毎日の検査室での生活は,およそ機械にうずもれたような生活である.これは検査に携わっている技術員の諸君が日常体験しておられるとおりである.ストップウォッチから自動ピペット,顕微鏡,自動血球計数器,比色計,脳波計,大型の自動化学分析装置,さらにはコンピュータまで……数えればきりがない.これがわれわれ臨床検査技術員を悩ませる.いったい検査室の機械はどんな意義をもって,いばって坐っておるのか.
いま全世界で公害が問題にされており,日本でも特にやかましく反省をせまられている.公害問題を論じるときには決まって現代の機械文明,物質文明が批判され,もっと素朴な人間生活へもどれとわれわれの生活態度についての強い決意をせまっている,旧石器時代から道具を使いはじめた人間は,道具を使うことによって,他の動物とは違った人間の文化を作り上げ,長い時間をかけて現在の物質文明を作り上げてきた.臨床検査技術も同様である.中世時代のヨーロッパでは‘神にめされ天国に昇る’として,安心して死んでいけた幸福があったかも知れないが,いま人間の文化から医療技術を取り上げて,この時代にもどることはできない.これは新幹線で行く替わりに,自然遊歩道を行くことと混同しては論じられない.
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