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はじめに
住宅における衛生設備の重要性については今さら強調するまでもないと思うが,特に身体障害者にとって,それは住宅の住み心地の良し悪しに大きな影響を与えるものである.住宅を人体に喩えれば,衛生設備などは臓器に該当するものと言える.衛生設備器具のメーカーとして我々はこの点を充分認識しているが,身体障害者,特に医学的配慮が必要とされる者の利用を考慮した衛生設備および器具を我々企業の者が設計する場合,設計の良し悪しを判定する基準としての医学的知識がない,ということにより多くの困難が伴う.
この身体的条件に対して,この設計,この状況に対し,この部位に対し,この組合せに対し……と全ての問に対し正確な答えを出すことはできない.しかし便器一つ商品化すればこれに伴い身体障害者の住生活に与える影響力は大であるため,またその責任の大きさから身体障害者を考慮した器具についてはその方向性を見出すために苦慮している現状である.我々企業内の設計者は営業的意味において,新しい対象に対しては新しい機能,新しい形状で対処するという性格が身についてしまっている.従って,身体障害者……驚破,特殊な機能,形状の器具,特殊な設備を備えたトイレ……という思考が働いてしまう.従来,これらの器具については商品開発者としての意識過剰と言うべきか,“見て見て”とその特殊性を前面に見せつける傾向が存在したことは否めない.この誤りをおくればせながら漸く認識するに至ったが,今後の方向については暗中模索である.したがってメーカーとして終始一貫した考えをもって器具の開発,設計を行っている,という段階に至らず自己矛盾も多いがその反省も含め,現段階での身体障害者の利用を考慮した器具開発における考え方などについて述べてみたいと思う.
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