The Japanese Journal of Physical Therapy and Occupational Therapy
Volume 11, Issue 10
(October 1977)
Japanese
English
特集 障害受容と援助法
障害受容のプロセスと援助の仕方―ケースワーカーの立場から
In Helping Clients to Accept Disabilities
深沢 道子
1
Michiko FUKAZAWA
1
1聖マリアンナ医科大
1ST. Marianna University Hospital, Department of Social Service.
pp.715-719
発行日 1977年10月15日
Published Date 1977/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518101558
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Ⅰ.はじめに
自分が一旦所有したものを失うのは,人間にとって辛いことである.他人から見れば些細なことやものでも,当人にとってはひどくこたえる.使わずに机の上に転がしておいた古い万年筆一本ですら,それがなくなったのに気付くと,半日費やしてでも探し出そうとする.その人でなければわからない思い出や愛着があるためだ.
もっと直接的,かつ意義のあるもの,買い換えのきかないもの―自分の能力や肉体の一部を失った場合の痛手は「もの」の喪失の比ではない.自然のプロセスとしておこる老化現象―徐々に訪れる心身の機能低下―に対しても,それを抵抗なく受け入れられる人はまずない.「自分だけではなく,誰にも起こることなのだ……」と頭ではわかっていても,心の片隅には,「ヒョッとすると,自分だけは例外かもしれない」という子供じみた願望があり,魔法の力を信じたい.現実に自分のこととして体験すると驚愕し,狼狽し,拒否し,それが起きたのを認めるのを出来るだけ引き伸ばそうとする.不自由をしのびながら「老眼鏡」を作るのを一日伸ばしにしている人,「入れ歯」をするのを極力避ける人,など.視力,聴力,記銘力,髪の毛,歯,肌や筋肉の弾力の衰えに直面して対処法に悩む「初老」の人たちを,若い人たちはともすれば「悪あがき」といった嘲笑の目で見るが,しかしこれも自分がその時期,年齢に達した時,必ずといってよい程通らなければならない道程なのである.
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