--------------------
医療の援助はこうして—医療ケースワーカーの事例を通してみた母子の問題
橋本 繁子
1
1賛育会病院
pp.34-37
発行日 1966年5月1日
Published Date 1966/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611203187
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
●Fさんの場合
(世帯主38歳,妻32歳(F),長女8歳,長男3歳.)
夫につれられて医療相談室に入ってきた時,Fさんは大きなお腹をしてアッというほど顔も足もひどくむくんでいた.夫は低い声で「診察券を買うと帰りの電車代がなくなるので……」というので,ざっと家庭状況を聴取した後,とにかく診察を先にと事務長に了承を得て産婦人科外来に連絡した.受診の間に夫との面接によると……もとは紳士既製服を人を使ってやっていたが,たちの悪い人にだまされ共同で仕事を大きく始めたが給料はもらえず,何もかもおいて逃げ出すようにして東京都庁へ行って泣きつき,やっと妻子とともに○○寮に入れてもらった.妻がこんな状態で心配なので当院へきたが,ここの掲示をみたので……とのこと.医師からはX線写真によって双生児であること,妊娠腎だから薬を服用し暖くして安静が必要との指示があり,妻はふくらんだ薬の袋をもって来室した.今後の方針について相談した結果,当分の間の生活扶助と医療扶助,そして児童福祉法の助産措置の申請をすることにして地区の福祉事務所に夫がさっそく行くことになった.3日後に救急車で入院して来たと分娩室の助産婦から連絡があった.夫は本人が動けなくなったのできたという.医師はまだお産には間があるとのことなので,福祉事務所の担当者に以上を電話連絡した.担当者は寮へ行ってみてあまり何もないので驚いたといっている.
Copyright © 1966, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.