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Ⅰ.はじめに
患者の治療に際しては,それがどのような治療種目であっても,患者のリスク管理は厳守すべきである.
理学療法,中でも物理療法の分野では,使用する治療器械や手段が,電気,光線,水,力などの,物理的エネルギーに関係するから危険性も高くなる.
このような物理療法のリスク管理について触れる場合には,次の四つの面より考察した方がよかろう.
第一に,治療を受ける患者についてのリスク.
第二に,与えるエネルギーを出力する治療器械と,その必要附属部品についてのリスク.
第三に,用いる手技,手法上のリスク.
第四に,治療を進める環境についてのリスク.である.
以上の四つの面が,それぞれ患者の局所的,全身的反応とにらみ合せて,治療上有効であり,危険性のないものでなければならない.
先ず第一の患者に関するリスクとしては,その治療が患者の疾病や障害に適用でき,症状悪化をきたさない,つまり禁忌性を含まないこと.また患者の治療上の姿勢や肢位が適当であり,強制されたところがなく,リラックスした状態で治療が進められるかである.
第二の治療器械や附属部品でのリスクは,それらが適切に整備調整され,安全かつスムースに使用できること.特に乾湿両環境内で,高圧電気使用の頻繁さから危険性はないかである.
訴訟問題の多い欧米では,治療機械の点検や修理は法律で,専門化,封印制度が厳守されている.
第三の手技,手法のリスクは,同一種目の治療器械による治療でも,出力が異なり,また同一器械でも,手技,手法により危険であり禁忌である場合とそうでない場合とが生ずる.
つまり治療に必要な刺激エネルギーの吸収や分散が,手技,手法により適切に行なわれ,危険性のないものでなければならない.
第四の治療環境のリスクは,筋減弱,可動制限,協調不良などの活動障害や,呼吸や循環系の内科的疾患に苦しむ患者が,安全にかつ安心して治療できる環境でなければならない.
このように物理療法におけるリスク管理は,四つの面よりそれぞれ検討する必要があろう.
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