The Japanese Journal of Physical Therapy and Occupational Therapy
Volume 9, Issue 9
(September 1975)
Japanese
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Ⅰ.はじめに
脳性まひの治療法として神経生理学的アプローチ(neuromuscular approach)が欧米(とくにアメリカ)で行なわれるようになったのが1950年代であった.Bobath,Fay,Brunnstrom,Rood,PNF,Doman-Delacato,そして最近ではVojtaと,この25年間に実に沢山の治療法が輩出した.わが国の脳性まひ訓練関係者(医師とセラピスト)は次々と輸入されてくるこれら新理論新テクニックの吸収と患者への試用に追われた.そして今,この啓蒙学習時代も漸く一段落し,多くの関係者の関心がそれら治療法の持つ効果の方に向けられたと言ってよい.文献によれば,アメリカでは従来の,いわゆる“conservative”もしくは“classic”または“peripheral”な治療から“neuromuscular”アプローチへの移行期である1950年代の半ばごろ,それら従来の方法の治療効果の可否についてかなり真剣に取り組んでいる1).しかるにわが国では,“conservative”な治療へ取りついたと思う間もなく,次の「新しい波」(神経生理学的アプローチ)に見まわれたという感じで,従来の方法に対する判定の問題に取り組んだ形跡がごくわずかにしかみられない.但し,記録データとしてはあまり残されていないかも知れないが,現場のCP訓練担当者たちの経験から経験へと口伝えされてきた判断の蓄積は存在する.いわば時代の風雪を経て,生き残った方法とすたれてかえりみられなくなった方法とが区別されてきている.こうして生き残ってきた方法は,神経生理学的アプローチー色に被われたようにみえる今日でも,現場の臨床家の間では大切に保存され使われているように見える.
筆者が整肢療護園に機能訓練士として就職した1962年(昭和37年)時点では,臨床では,高木法を核としてPhelps,Deaver等の方法を加味した治療法が使われていたが,文献抄読会などでは,さかんにBobath,PNFなどがとり上げられていた.いわば,従来の方法と新しい波との両方を同時に経験したという点から,“conservative”な方法の効果について,文献,私見とり交ぜて論じてみたい.
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