Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
ひとつの専門職がその国に育つ,ということは意義深いことである.そしてそれは容易ならぬ過程の連鎖でもある.名づけて作業療法とは何も最近新しく生まれたものではない.我国にも精神科領域,結核治療の領域及び身障領域において古くは明治の中期よりこれらの分野においての開拓はなされて来ている.それはそれぞれにこころある先輩方のその時代への挑戦であったと思う.現在,医学の一端として作業療法は世界的にもその存在を確立しつつあるがおくればせながら我国においても同じことがいえる.唯あまりにもまだ知られざる分野である事はいかんである.この種の専門職成長の遅延は種々な点に起因するが,我々その専門職にたずさわる者として思うことは先ずその専門職員を育てる教育そのものの現状と今後の課題である.今回はその教育の重要な一分野である臨床教育に関してこれらの面について考えてみたい.
この作業療法なるものが我国に,国によって教育組織化されたのは昭和38年来のことであってこの教育の背景には米国から受けた影響が非常に大きい.当時は米国人の教師,英語による教材,指導書,米国を背景に発展した技術,自助具,装具品等によって教育はおしすすめられた.いかんせん10年後の今でも教材,指導書にいたっては当時とさして変るところがない.唯我々の中に少しずつ日本語をオリジナルとする教材や指導書を作りたいとの願望はかなり強く出ている.これらの要望にちなんでまず事始めに作業療法教育内容基準が打ち出され(“理学療法士作業療法士養成施設指導要領についで”参照)次いで“臨床教育の手引ぎ”について現在三年越しでその作成がすすめられている.以下主に臨床教育と臨床教育手引作成の背景,その内容及び我々に課せられている今後の課題についてのべてゆきたい.
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.