- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
肢体不自由児のリハビリテーションを我国では,故高木博士が「療育」と云う言葉で表現されてから40年程の歴史を持つ今日ですが対象となる疾患群の変動や,そのリハビリテーション技術,施設および養護学校の組織等において,その時代なりに進展を示しつつ今日に至った,と云う事になるのだが,近来幾つかの問題が提示されたことについて考えてみると,「療育」と云う言葉の意味を今一度問い返してみる必要があるように思われるので,それらの問題をも含めて,それぞれ多少違う立場の先生方に,日常の実践を通してのお考えを発言していただいた.
問題らしきものを羅列すると,以下のようなことがあるように思われる.
1.施設の数や規模を増やし,大きくすることにのみ注意がそゝがれ人間やその技術に金をかけない結果,様々のトラブルを生み出している.そのひとつに教育は教育,治療は治療などと云う風潮が広まり,ひとりのこどものひとつの身体を2つに引き裂くようなことをしていないか.
2.障害を無視した型通りの義務教育を,押しつけてはいないか.その結果,実生活上何の役にも立たない知識しか持ち合せのない義務教育修了の障害児を生んでいないか.
3.施設や学校における専門家同志の拙劣なチームづくりの不協和が,トータルとして質の高い治療ができない結果を生んでいないか.
4.養護学校等における「養護・訓練」に関する捉え方や実施にまつわる混乱.
5.脳性マヒ児,又は類する疾患に対しての「療育」は,各専門(教師,PT,OT,ST等)領域に線を引いた形で仕事をすべきなのか,すべきでないのか.
等々数え上げれば沢山あるが,4人の先生方の発言を通して,これらの問題を考える材料としていただきたい.
Copyright © 1974, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.