特集 痛み
<随想>
誤った治療による痛み
上田 敏
1
1東大病院リハビリテーション部
pp.396
発行日 1974年6月15日
Published Date 1974/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518100849
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「痛み」というとき,忘れられない一つの思い出がある.
それは数年前に東大のリハビリテーションセンターに依頼されてきた70近いおじいさんの例である.東京の近県の地方都市で,脳卒中のためにかなり重症の右片麻痺になり,そのまま入院しないで,在宅のまま2か月ばかりを過した.この間,近所の医師に血圧を計ってもらったり,注射を打ってもらったのはよいとして問題なのは,彼がその2か月の間に受けた「リハビリ」である.脳卒中に倒れてすぐ,近所の人からの紹介で,「リハビリを専門としている」と称するマッサージ師に来てもらって,「私が必ず歩けるようにしてあげる」といわれ,毎日「リハビリ」をやってもらったそうである.
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