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Ⅰ.はじめに
SM0N(subacute myelo-optico-neuropathy)に対するリハビリテーションの必要性はかなり強調されているが,SMONのもつ運動障害の正確な把握,具体的な治療手技は未だ明確にされていない.SMONは中枢神経系の疾患であり,それによる運動機能障害をよく分析し,対応する治療を加えることからリハビリテーションは始まるものであろう.そのような立場から,ここでは理学療法にとって必要なSMONの臨床症状,および治療原則を中心に述べることにする.
SMONの運動障害は,かなり多様であるが,多くの症例に共通した現象が認められる.SMONの臨床症状の主要なものとして,これまでに,下半身の知覚障害,下肢の筋力低下(これは大部分随意運動における筋力を意味している),錐体路徴候(腱反射亢進,バビンスキー反射の出現)などが報告されている.また脊髄における病理学的所見でも,後索・側索の変性が主とされていて,これと臨床所見との一致もいわれている.しかし運動の異常や障害に関しては,両下肢運動麻痺,失調症などと表現されているのみで,その詳細についてはあまり報告されていない.
ヒトの運動・動作の大部分は自動的automatic であり,無意識レベルで巧みに行なわれ,しかも重力に抗して正しい姿勢,バランスを常に維持している.そのためには多くの静運動力学的姿勢反応stato-kinetic postural reactionsが働いている.これは下位中枢(脊髄・延髄など)にある種々の姿勢反射機構を,上位中枢が巧みに統合することによって行なわれている.中枢神経系の疾患では,この下位中枢に対する上位中枢からの制御が障害され,解放現象release phenomenaとして患者に姿勢や運動の異常が現われてくる.中枢神経系の障害では,筋の随意収縮における麻痺が運動障害の主要問題となるのではなく,姿勢や運動における筋活動の協調性co-ordinationの異常が障害の原因となっている点に問題がある.これにより種々の姿勢での筋緊張の異常がおこり,運動を姿勢の連続的な変化としてとらえると,運動の異常にもなってくる.この筋緊張異常(異常姿勢緊張abnormal postural tone)が運動における立ち直り反応righting,reactions,平衡反応equilibrium reactions,更には手先の動作で体幹や四肢の近位端を固定する場合などの,無意識での姿勢・運動を行なう機能を妨害している.
そこでSMONにみられる運動障害を姿勢・運動の異常という立場からとらえ,この異常を軽減し,正常に近い姿勢や運動パターンを獲得させるための理学療法を行なうことが大切となる.
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