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本の紹介/井上正吾著「精神障害」
小林 夏子
1
1都立松沢病院
pp.548
発行日 1973年7月15日
Published Date 1973/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518100673
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リハビリテーション全般についていえることであるが,とくに精神障害者のリハビリテーションをとりあげる際,関係者が異ロ同音に口にするのは社会の偏見,差別あるいは保安優先の収容隔離の現状である.これは,日頃精神障害者と直接交わる機会をもたない人にも,最近の精神医療に関する一連の告発やキヤンペーン等マスコミによってすでに紹介済みのことと思う.そこから『いったい,今精神医療の現場はどうなっているのか』とか『精神障害者のリハビリテーションはどうなるのか』などと発展的に関心を向けられる方はもちろん,教養の一端としてこのテーマを一通りざっと勉強しておこうという方にも,本書は格好の知識を与えてくれる.また発症すると社会では危険なもの,無能なものとして不当に差別され,抑圧されてしまう―「我邦十何万ノ精神病者ハ実ニ此病ヲ受ケタルノ不幸ノ外二,此邦二生レタルノ不幸ヲ重ヌルモノト云フベシ」ということばの再吟味が強く叫ばれる現時点では,タイムリーな読書を提供してくれるにちがいない.
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