書評
尿路結石症の外科的治療―井上貴昭,岡田真介,濵本周造 著
奴田原 紀久雄
1,2
1武蔵野徳洲会病院尿路結石治療24時間センター
2杏林大
pp.605
発行日 2025年6月20日
Published Date 2025/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.038523930790070605
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かつての開放手術では,手術の助手につき術野を観察してその外科手技を獲得していった.術者の手の動きと術野でのはさみや鉗子の動きは術野を見ているだけでほぼ正確に把握できた.現在主流の内視鏡手術において,手術野は開放手術と比較にならないほどよく観察できる.しかしこの視野を展開するために,術者の手元ではいかなる操作が内視鏡や操作器具に加えられているのかは,術野から目を離さないとわからない.すなわち同時にこの2つを観察し理解することは困難である.この壁を越えるためにシミュレーターやハンズオンがあるが,それでも術者の手元で行われている操作テクニックを解説し尽くすことは難しい.
本書は上部尿路結石治療のスタンダードを示しつつ,それを完遂するためのテクニックを解説した世界的にも類がない良書である.手術テクニックを言語化する難しさは大変なものであるが,第Ⅰ部で使用機器と術前診断,術前感染症対策につき簡潔ながら十分な解説を加え,第Ⅱ部で各術式の基本的手技を驚くほど深入りして紹介している.さらにこれで説明しきれなかった細部を第Ⅲ部のCase Discussionで補足(というよりこれ自体が卓越した技術伝授書といえるが)している.今まで数多くの手術とハンズオンセミナーを行ってきた著者らの経験に基づいた,他書ではまねできない解説書といえる.これらのテクニックを惜しむことなく記載しているのは,著者たちの安全性を確保したうえで上部尿路内視鏡外科治療を普及させようとする情熱にほかならず,同じ道を歩んできた者として尊敬せざるを得ない.

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