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はじめに
最近数年間にこれまで遅れていた身体障害者,特に切断者やまひ患者に対する補装具の研究開発の機運が高まりつつある傾向が各地でみられる.特に1960年にサリマイド薬渦による重篤な先天性上肢高位欠損児の発生を契機として,世界各国で動力義手の開発が盛んに行なわれるようになった.しかしその結果は必ずしも十分実用化に耐え得るものとはいえず,今後更に新たな研究開発が望まれる.
ここで忘れてはならないことはサリドマイドによるフォコメリア,アメリアのような重篤かつ高位の欠損以外にも種々の程度の先天性欠損ないし奇形児はこれまでも生れてきたし,今後も継続して発生が予想される.その他に交通事故,疾病など後天性原因による切断児は増えつつあるといっても過言ではない.これらの小児切断者に対する対策は残念ながら我国ではほとんど行なわれていなかった.一方,欧米各国では以下に述べるような小児切断の特殊性が十分認識され,専門のクリニックで将来性の展望あるリハビリテーションが着々と行なわれていることはたいへん羨しいことである.例を北アメリカ大陸にとると,各専門家が揃い,かつ定期的に活動を続けているAmputee Clinics 440のうち,小児切断を専門に取扱っているクリニックの数は91(20.6%)あり,その他に成人切断とともに小児を扱っているクリニック90(20.4%)を合わせると,実に全体の2/5が小児切断の問題にとりくんでいる1).これらの事実の背景にはGeorge Aitkin,Charles Frantz (Michigan Area Amputee Clinic,Grand Rapids),Miles O. Brooks(U. C. L. A.)らの先駆者の長年の努力の成果が積み重ねられたことを十分理解する必要があろう.
我国では以下に述べるようなさまざまの問題のためもあって,小児切断についてこれまでほとんど触れられてこなかったことは非常に残念であり,今後この方面にもっと多くの人々が注目されることを希望するしだいである.
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