Japanese
English
特集 手の外科とリハビリテーション
手の機能解剖
Functional Anatomy of the Hand
中山 知雄
1
Tomoo NAKAYAMA
1
1日大解剖学
pp.15-23
発行日 1969年8月9日
Published Date 1969/8/9
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518100235
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はじめに
人類の祖先が直立歩行という習性を獲得し,上肢の自由性を得たときが,人間のすばらしい発展の暁であるといっても過言であるまい.上肢のうちでも,特に手は他の動物にみられない特異の発達をした.われわれは,多くの旧常の動作から,道具・機械の製作・操作などの仕事,さらに投げる,打つというスポーツに至るまで実にもろもろのことに手を使う.したがって,個々の場合の手の働きは,実際には,相当に複雑である.しかしすべて手の基本的な構造に基づく一定の機能が組み合わされているとみていいだろう.
ヒトの手の特徴としては,手の部分に対して指の部分が長いこと,手根骨の構成とともに母指球・小指球が発達して手掌の凹面が作られていること,母指が他の指と同列でなく,全く独立した自山性をもっていることなどである.さらに,他の哺乳類も含めて,手を動かす筋肉の主体は前腕にあって,手や指がその容積の負担を免れていること,しかも,いくらかの小筋は手の中にあって,微細なコントロールを行なっていることも加わる.
手の働きとしては,たとえば物を触れてみるとか,温度をみるとか,コップを暖めるなどのこともあるが,とても全部には及びえないので,ここでは,その機能の主体として,手および指の運動を取り上げて言及してみたい.
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