視座
学術論文にのぞむこと
榊田 喜三郎
1
1京都府立医科大学整形外科
pp.519
発行日 1984年5月25日
Published Date 1984/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408906962
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日整会誌の編集や認定医の資格認定に当っての論文審査や教授選考に関係する度に学術論文の定義に苦慮すると共に改めてそのあり方に関心がもたれる.一体,学術論文というのはどう定義し,何を目標にして論文であるか否かを区別するのであろうか.国語辞典によると論文とは意見を述べて論議する文とあるが,学術論文は少なくとも自分の独創的な発想や経験,成果を忠実に述べたものであって,研究の目的が明らかにされ,正しい方法のもとに妥当な成績が報告され,さらに独自の十分な考察がなされ,それにもとづく正しい結論が引き出されており,また自分自身が直接原著より引用した参考論文が正確に記載されているものをいうと考えられる.このような論述型式を踏み,独創性のあるものこそが価値ある原著論文であるべきである.
論文のあり方を批判する場合,必ずその背景となる学会や研究会のあり方や関連性が問われる.一昔前には学会と考えられるものは春の年次総会と秋の地区会議に月例集談会ぐらいのもので,のんびりと研究活動を続けていればよく,それだけに重厚な発表も多くみられた.昨今ではやたらと学会,研究会がふえ,年中追いまくられる結果,とてもじっくりと象牙の塔にこもり,格調の高い発表を行い,こくのある論文を記述するゆとりがなくなった.
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