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I.はじめに
滲出性中耳炎は主として小児および高齢者に多くみられる疾患である。とくに小児の場合その疾患頻度は高く,また学習,言語習得に影響を与える可能性もあることなどから,本疾患に対する関心は近来とみに高まりつつある。本疾患は小児においては放置しても経過を追うと自然軽快し治癒する例もある。しかしながら重症例においてはさまざまな内科的および外科的治療にもかかわらず,長期にわたり完治せずに中耳癒着症へと進展してゆく場合もあり,その病像は多彩である。
病因としてはアデノイド増殖症の関与をはじめとして,急性中耳炎,上気道炎,アレルギーなどの因子に加えて,耳管機能自体の未成熟などさまざまな要因が想定され検討が加えられている。加えて最近は無作為選別法による滲出性中耳炎罹患児に対する調査結果からアデノイド切除の効果に疑問を呈する立場をとるものもあり,本疾患にたいする治療方針も再検討を要する時期となったと思われる。そこで今回われわれは最近4年間に当科において滲出性中耳炎と診断しその経過を一定期間観察しえた68症例を対象に,外科的治療法としてのアデノイド切除術を全麻下にその手術手技を徹底して行った場合と,薬物内服や通気などの保存的治療のみを行った場合のおのおのにつきその効果を比較検討した。
In consecutive cases of 68 children suffering from otitis media with effusion, the changes in hearing level were compared between two groups treated with and without adenoidectomy. Adenoids were carefully removed under general anesthesia with a direct view of the cutting margin. The averaged hearing level and tympanometric findings at one month postoperatively showed significant improvements in the surgically treated group.
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