特集 めまい—問診から治療まで
IV.めまい疾患
神経内科からみためまい疾患
清水 夏繪
1
1帝京大学医学部第三内科学教室(市原病院)
pp.809-816
発行日 1986年10月20日
Published Date 1986/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492210200
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
"めまい"を主訴に神経内科を訪れる患者は神経内科外来患者の5.7%1)あるいは12.5%2)との報告がある。そのめまいの内容は種々で,回転性めまい,ふらつき感,吸い込まれるような感じ,眼前暗黒感から歩行時のふらつきにまで至る。また原因疾患はMénière病から椎骨脳底動脈系のTIA(transient ischernic attack),後頭蓋窩腫瘍,脊髄小脳変性症,起立性低血圧,てんかんなど多彩である。神経内科を訪れるめまい患者の原因疾患は末梢迷路性以外のものが多く2),治療の必要のあるものが多いが,たとえば椎骨脳底動脈循環不全でも眼振所見は末梢迷路性障害と全く異らないことがある。したがってめまいの診断と治療にさいしては高血圧症,糖尿病,脂質代謝異常などの全身疾患や患者の年齢などを考慮する必要がある。めまいを訴えているにもかかわらず,一般身体所見,神経学的所見に異常を認めないことも多いが,系統的に診断を進めることが治療十からもきわめて重要である。"自律神経失調症"と言われたという患者が多いが,本来そのような疾患,病名はなく,たとえ自律神経検査で異常の有無が診断されても自律神経失調がめまいの原因であるとの証拠はない。したがってこのようなあいまいな診断名は避けるべきである。本稿では末梢迷路に原因のあるめまい以外の疾患(表1)について述べる。
Copyright © 1986, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.