特集 扁桃—今日の臨床指針
IV.他科領域と扁桃炎
腎炎と扁桃
鈴木 昌也
1
1新潟県立新発田病院耳鼻咽喉科
pp.809-812
発行日 1985年10月20日
Published Date 1985/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492210031
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I.はじめに
腎炎と扁桃の関係はいま新しい岐路に立っている。これは一つに原発性糸球体腎炎のなかにIgA腎症という大きな疾患概念が組み込まれたことによるものである。従来ヒトの糸球体腎炎には先行感染の明らかなEllis I型と先行感染および発病期不明のEllis II型があり,Ellis I型の先行感染には上気道炎ことに扁桃炎が多いことから,扁桃と急性糸球体腎炎とには深い関係があるものとされてきた。この考え方は一面で正しくpost-streptococcal nephritisとして現在でも残っている。ところがこれと非常にまぎらわしいものにIgA腎症が位置している。
IgA腎症は1968年にBergerとHinglais1)によって初めて報告された原発性糸球体腎炎で,この疾患の特徴は免疫螢光法で腎糸球体メザンギウム領域にIgAが優位に沈着を示すことであり,臨床的には上気道炎や腸管系感染症状を伴ったりその直後に肉眼的血尿が突然出現し,感染症状の軽快とともに消褪することを反復するのが典型的なものとして知られている。ただし最近の広範な疫学的調査2)では感染の治癒後,軽度の蛋白灰と顕微鏡的血尿が無症候性に持続し,これがたまたまchance proteinuriaとして発見され,腎バイオプシーを行って免疫螢光法によりIgA腎症の確診を受けることも少なくない。疾患概念として確立されたのはMcCoyら3)のすぐれた綜説の発表された1974年頃からであり,比較的新しいクライテリアといえる。
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