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I.はじめに
わが国においては,舌癌のために舌半側切除などの外科療法を行った患者の構音能力に関する研究が少ない。その主な理由としては術後生存率の改善が最優先され,術後の機能回復はむしろ二次的,三次的な課題とされる傾向のあることが挙げられよう。ところが近年になって再建外科の手術手技の改善が進み,とくに1980年代に入ってからは,口腔再建にはmyocutaneous flapが手術術式,術後の口腔機能ともに優れているという報告1,2)が行われるようになり,その中には構音能力についての検討も含まれてきている。術後の口腔機能の中で,嚥下能力に関しては実際的で客観的な評価方法が今までのところ確立されていないが,構音能力に関しては単音節や単語,文章などのspeech sampleを第三者に聞き取らせ判定する聴覚印象による方法がよく用いられている。なお構音能力の評価は,現在までのところ不特定な一時点のみで論じられることが多く,経過を追った報告はほとんどみあたらない。一般に経過の長いものほど構音能力が良好であるといわれてはいるものの,その構音機能回復の時期や構音障害の特徴,さらにplateauの問題などは検討されていない。
箸者らは舌癌のために舌半側切除などの後,PM-MC flap(大胸筋筋皮弁)を用いて再建を行った1症例の構音能力の回復経過を記録し,構音障害の特徴などについて検討を加えたので報告する。
The phoneatric recovery of articulation disorders in a 59-year-old man with oral cancer who underwent reconstructive surgery with a pectoralis major myocutaneous flap and a ceramic artificial mandible after hemiglossectomy and partial mandibulectomy was presented.
The methods used for an assessment of articulatory abilities were to compare the patient's reading ability of short story and of 100 Japanese monosyllables with 5 normal volunteers who had no special training.
Despite of a great loss of lingual volume, the gradual tendency of recovery of articulation in speech was observed after 2 years postoperatively. The related problems were also discussed.
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