特集 滲出性中耳炎—最新の知見—
IV.治療
換気チューブ挿入療法,とくにチューブの選択と術後管理
横山 俊彦
pp.833-841
発行日 1984年10月20日
Published Date 1984/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492209852
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
I.はじめに
小児,とくに就学前幼児の滲出性中耳炎は,近年増加の一途を示し,外来でよく遭遇する疾患の一つである。滲出性中耳炎(以後,滲中と略す)は一般に自然治癒傾向の強い疾患であるが,頻回の鼓膜切開,排液を要する難治性滲出性中耳炎が最近増加の傾向を示している。このような反復,遷延する滲出性中耳炎は不可逆性の中耳病変を招き,ひいては学習活動に少なからず悪影響をもたらす可能性があるので,早期積極的治療法が必要である。
最近わが国では本症の治療には,鼓膜に小穿孔をあけ,非刺激性のチューブを挿入,留置しておく手術療法,いわゆる換気チューブ挿入療法(以後,チュービングと略称する)が,最も有効な治療として再評価されてきている。欧米では,チュービング療法は1954年から繁用され,多数の報告書1〜13,15〜20)もあるが,わが国においては,その臨床普及は3年前ぐらいからであり,原著に限定した報告は著者の調べた範囲では松崎ら30),河本ら26),横山34),大西および宮島24),畑中ら69)にすぎない。図1は昭和49年から58年の10年間に日本臨床耳科学会に報告されたチュービング療法を主題,または関連した件数の年次推移を示したものであり,昭和49年から51年の間には報告件数はなかったが,昭和52年から年々増加し,昭和57年の学会(福島)において爆発的な増加を示している。
Copyright © 1984, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.