特集 頸部腫脹の臨床
III.症例
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ネコひっかき病によると思われる願下部の類上皮細胞肉芽腫の1例
古川 仭
1
,
石黒 英世
1
,
大角 隆男
1
,
小森 貴
1
,
滝元 徹
1
,
梅田 良三
1
Mitsuru Furukawa
1
1金沢大学医学部耳鼻咽喉科
pp.903-906
発行日 1983年10月20日
Published Date 1983/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492209691
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I.はじめに
頭頸部領域におけるリンパ節腫脹性疾患については,枚挙にいとまがない。その中に,組織学的に類上皮細胞からなる肉芽腫を形成するリンパ節炎の1群が存在する。その代表的なものは結核結節であるが,臨床的に臓器結核が証明さねず,抗酸菌染色が陰性であるような類上皮細胞肉芽腫では,結核症は完全に否定されないばかりかその他の類似疾患との鑑別がしばしば問題になる。さらに類上皮細胞肉芽腫形成機序や,生体におけるそのような肉芽腫発生の意義を考える時,この病変は色々話題を提供してくれる興味あるリンパ節炎といえる。ネコひっかき病もリンパ節結核と類似の病理組織学的所見を呈する疾患で,それほど珍しいものではないが,耳鼻科関係からの報告は少ない。しかし,リンパ節炎の好発部位は,最も多い腋窩部についで頸部,耳前部,顎下部など,耳鼻科領域にもみられ,耳鼻科医を最初に訪れる機会も多いはずである。
今回,我々が最近経験した結核症以外の類上皮細胞肉芽腫からなるリンパ節炎患者の中に,ネコひっかき病によると思われる症例が存在したので,本症の紹介と文献的考察を加えて報告する。
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