鏡下咡語
医術を右手に……
高橋 通
pp.622-623
発行日 1978年8月20日
Published Date 1978/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492208691
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ある休日の午後。子供の自転車を一寸かりて初春の街に出掛けた。柔かい陽ざしの割に風は肌に冷たかつた。道端に突立つている自働販売器から煙草を一個求めた。金属製の音と共にポロリと白い姿が転げ落ちる。味気ない仕草だ。こんな人間が増えてきたのだ。
本屋の店頭には,妙にケバケバしい広告が貼られ,所狭しと並ぶ書物の中から一冊の随筆を抜き取つた。立ち読みすると,
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