序

　第47巻に悪性腫瘍の特集が行なわれた。まだご記憶のことと思われるが，その豊富な内容により，われわれは大いに啓発され，また深い感銘を受けた。

　悪性腫瘍は生命の危険と直接結びついているので，その診断，治療に苦慮される故もあつて，報告例が多い。それに比べて良性腫瘍は予後が良好であることから，単純な良性腫瘍は報告されないことも多いようである。腫瘍が良性か悪性かということは，定義としてあるにしても，厳然たる境界があるわけではない。良性腫瘍といわれているのに悪性であつたり，治療の途中から悪性化するという例もある。最近の報告例をみると悪性腫瘍と良性腫瘍の数はほぼ同数であるが，良性腫瘍の中の約半数は悪性化しているという例である。ここで良性腫瘍についてまとまつた知識として学んでおくことは有意義であると思われる。