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I.はじめに
近年,蝸電図や聴性脳幹反応(BSR)などの潜時の早い誘発反応の研究が盛んになり,臨床的にも利用されつつある。BSRはクリック音で頭皮上から容易に反応波形を検出することができ,しかも意識状態に影響されない安定した波形であるといわれている。したがつて睡眠状態によつて反応波形が変化する頭頂部緩反応(ERA)よりこの点に関しては優れた反応である。ただし,臨床的に聴力検査に応用するためには特定の周波数による刺激音を用いる必要があり,過渡現象の少ない音では誘導記録がむずかしい。このためBSRは2KHz以上の比較的高い周波数成分を含んだ音に応じた反応であるといわれているが6),これも与える刺激音の性質に制限があることにも一因があろう。
今回の研究は刺激音に周波数変調音(FM音)をもちい,BSRの反応波形をクリック音と比較した。またFM音の変調度を変えることによつて反応の諸性質を明らかにし,臨床的応用の是非を検討,すなわち,反応の周波数特異性の検討を目的としたものである。
The early response evoked by a FM tone, which was presented in a continuous pure tone of 2KHz by shifting up its frequency at intervals, was characterized by a large vertex positive deflection. This response seems to be similar to the V wave of click stimuli in a sense of latency and polarity. The latency of the response decreased by 0.2 msec with the increase in frequency increment by 20%, 40%, 60% and 80%; it is speculated that the FM tone may be capable of stimulating the different parts of the basilar membrane according to the degree of its shift.
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