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I.緒言
外耳道にみられる腫瘍は比較的少ない。しかし,外耳道入口部は組織学的には,皮膚組織であり,皮膚科領域においてみられる腫瘍の発生についての報告がしばしば認められる。杉浦1)は,1900〜1970年までの本邦における外耳道良性腫瘍を分類し,黒色腫ないしは色素性母斑を34例と報告している。その後,1970年南ら2)は,54歳女性の外耳道melanoma,15歳女子のnevusを報告し,1972年兵3)は,外耳道色素性母斑の組織分類を行ない,真皮内色素性母斑の1例を報告している。1973年荒山4)は,外耳道良性腫瘍の6例を報告し,その内2例は色素性母斑であり,2症例とも女性であつたと報告している。1976年清水ら5)は,45歳女性の右外耳道下壁中央部に黒色腫の発生例を報告している。色素性母斑と悪性黒色腫の鑑別は,肉眼的には難しいものであり,特に悪性黒色腫の試験切除は予後を悪くするため,手術適応に際しては慎重を要する。また,色素性母斑は,悪性黒色腫発生の前過程病変としても知られている。したがつて,現時点では母斑においては,十分に健常部も含めて切除,摘出を行ない,病理組織学的,細胞化学的検討により,良性,悪性の鑑別,また悪性への前過程病変に関する組織学的分類が肝要と老えられる。従来,これら色素産生細胞の異常による疾患に対しての組胞化学的研究は,主として,悪性黒色腫を材料としたものが多く,TyrosineまたはDopaを用いた色素形成に関する報告は多いが母斑細胞に応用した報告は少ない。とくに,母斑からの悪性化が日常臨床では,重大な問題であり,母斑における色素形成能およびこの観点に立つての組織形態学的分類は重要である。われわれは,外耳道色素性母斑症例において,摘出組織にDopa反応を行ない,色素形成能から組織分類を行なつたので報告する。
A case of pigmented nevus of the external auditory canal is reported. The growth was surgically removed and histopathological and histochemical studies were made on the specimen.
With ordinary staining melanin was found in the dermis and the basal layer showed clear cells. With dopaoxidase reaction positive cells were found to be distributed along the upper portion of the dermis and basal layer of the epidermis. According to the classification of Kawamura, et al, this growth appeared to be a compound nevus. The patient is free from postoperative atresia of the external canal 4 months after the operation.
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