Garcin症候および異常眼振を呈した上咽頭癌の1剖検例

NASOPHARYNGEAL CANCER THAT PRESENTED GARCIN SYNDROME WITH NYSTAGMUS

　I．緒言

　上咽頭癌は早期発見が困難なことが多く，しかも予後不良でしばしば遠隔転移や頭蓋底浸潤を来たして死亡することが多い。治療法としては手術的療法よりは放射線治療が標準化され，かなりの一次的効果が期待できるものの再発を来たすことも多い。またその発生に関しては多くの説があり，遺伝因子説，環境因子説，ウイルス説，局所刺激説などがある。疫学的に中国南支，台湾に多いことは有名で，男女比も約7：3で男性優位の癌である。

　今回著者らは上咽頭癌のため一次照射のあと3カ月後に局所再発を来たし，さらに脳神経症状が急速に進展し，異常眼振も観察され，ついにはGarcin症候を来たし死亡した症例をさいわい剖検を行ないえたので，その臨床症状の概要と剖検所見について述べいささかの考察を行ないたい。

A case of nasopharyngeal cancer in a man, aged 59, was treated by irradiation therapy. The patient soon developed Garcin Syndrome and died.

The authors believe that the Garcin Syndrome is an affection that occurs exceedingly rare and only under specific conditions.