症候群・徴候・11
Garcin (ギャルサン)症候群
平山 恵造
1
1順大脳神経内科
pp.417
発行日 1974年4月1日
Published Date 1974/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203530
- 有料閲覧
- 文献概要
この症候群の本来の名称はsyn—drome paralytique unilatéral glo—bal des nerfs craniens,すなわち脳神経汎半側麻痺症候群である。ここで「汎」としたところにニュアンスがあり「全」ではない。すなわちtotalでなくglobalである。この辺の感覚は我々日本人に理解しにくいところであるが,半側の脳神経が次々におかされて行つて,多数の脳神経が障害される状態をglobalで表現している。従つて,その極端として半側の脳神経が全部障害されることがあり得るが,このtotalな場合が症候群として完全であつて,totalでなければ不全型であるというのは当を得ていない。何故なら,この症候群はtotalにならなくては本当の意味をもたないのではなく,次々と多数の脳神経が一側性にまきこまれて行く過程すなわちglobalに意義があるからである。
Garcin症候群において,この様に多数の脳神経が一側性に障害されることが強調されるあまり,他の重要な特徴が等閑にされがちである。すなわち,Garcin症候群は上記の如く,①半側のみの脳神経が広汎に障害されることの他に,②うつ血乳頭や頭蓋内圧亢進症状を伴なわず,③四肢の知覚・運動症状を呈さないことも必須条件である。この②,③の条件は病変が頭蓋内や脳幹に及んでいないことを示すものである。因みに,この症候群は,後述するように,頭蓋底の病変によるものである。
Copyright © 1974, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.