Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.緒言
従来より瘻孔症状における圧迫眼振の方向として,その急速相は陽圧を加えた場合,患(同)側に向い,陰圧を加えた場合,健(反対)側に向うとされている。すなわち,陽圧を加えると迷路骨包に瘻孔があれば,膜様迷路内の圧が変化しampullopetalの内リンパの流れがおこり,Ewaldの説に従い患側に向う眼振がおこり,陰圧を加えるとampullofugalな流れがおこり,健側に向う眼振があらわれるというわけである。しかし,臨床上では,このように単純なものではないことはかなり古くから知られており,すでに1906年Bárány2)は,圧迫眼振において陽圧により同側に,陰圧により反対側に向う眼振を発生する場合,定型的反応(typical reaction),これに反する場合を,非定型的反応(atypical reaction)と名付けている。
この非定型的反応の頻度について1923年Nylén10)は,164例中42例,1955年Permin11)は,83例中9例であつたと報告している。しかし,最近のENG記録法の進歩,普及によつて眼振の性状が正確に把握されるようになるとともに,非定型的反応を示す症例がかなり多いことが判明し始めてきた。私どもも最近,12例14耳の瘻孔症状を有する慢性中耳炎を経験し,そのうち,真に定型的反応を示したのは僅か3耳であり,それ以外はいわゆる非定型的反応を示したので,その詳細を述べるとともに,いわゆる非定型的反応のおこる成因について考察を加え,さらに従来より慣用されてきた定型的反応という語は,臨床上では定型的とはいうもののこれは症例の大部分が呈する反応ではないことを理解して使用すべきであると考えたので,ここに発表し,ご批判を得たい。
Since the development of ENG the direction of the ocular movement of pressure nystagmus caused by fistula formation is more acurately recorded, and reports on atypical reactions have been on the increase. The authors report 14 ears with fistulous symptoms in 12 patients that resulted from chronic suppurative otitis media. The results are as follow:
Typical reaction in 3 ears, (21%).
Approximately typical reaction in 4 ears, (29%).
Atypical reaction in 7 ears, (50%).
These results are suggestive that the pressure nystagmus in fistula formation is not always clinically constant. Cosequently, the differentiation between the typical and the atypical should be defined more accurately.
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.