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Ⅰ.序
アレルギー性鼻炎や血管運動性鼻炎(鼻アレルギーと血管運動性鼻炎の区別については種々論議されているが,両者の臨床症状をまとめて鼻アレルギー様症状として,両者に対してアレルギー様鼻炎と,ここでは便宜上呼ぶことにする)患者で耳鼻科を訪れるものの数は最近驚くほど増加している。しかし,これらのアレルギー様症状の発症機序や臨床上の病態の把握は決して容易ではなく,これらに関する多数の研究業績にも拘らず,実際臨床に応用しうるような理論的にも実際的にも妥当であると思われ,しかも効果的である治療法はというと,遺憾ながら十分に満足すべきものがあるとはいえないのが現状であろう。しかし,これらのアレルギー様症状の主役を演じるものは自律神経とくに副交感神経であるとして,これをもととした治療法の開発が最近抬頭してきた。すなわち,1961年から約10年間に亘つてGolding-Wood1)2)3)(England)が頑固な症状を反復するアレルギー様鼻炎で従来よりの治療法に頑強に抵抗するものに対して,Vidian Neurectomyを適用施行し,その優れた成績を百数十例にわたつて報告している。この手術手技そのものはまつたく新しいというものではないが,彼の方法でアレルギー様鼻炎の手術的治療がはじめて軌道にのつた点を強調したい。著者としては,この場合Vidian神経を切断してしまうという点でいささかの抵抗を感じるが,この手術を実際に200例に及んで経験したことからいうと,従来の各種の治療法に比べて,いくつかの優れた利点をもつており実地臨床に現段階では必須ともいえる面を有しているものと思われる。
著者はかなりの症例の1例1例に対して,その診断,治療経過などを通して,これらアレルギー様鼻炎の病態について臨床的な立場から現段階では次のような点に配慮している。
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