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Ⅰ.緒言
鼓室成形術における鼓膜の形成は,思つたよりむずかしいものである。ことに耳小骨が消失していたり,鼓室の病変が高度で,広範囲に病的粘膜を除去しなければならないような症例では,術後に障害の残らないよう鼓膜を形成しなければならない。また既手術例ですでにブリュッケが落とされ,なくなつているような症例では,変形鼓室を巧みに処理しながら鼓膜を形成しなければならない。
このような症例に対し,筋膜のような柔軟な組織で鼓膜を形成すると,できあがつた新鼓膜は,往々にして鼓室壁と癒着したり,あるいは逆に外耳道壁に沿い盛り上つてくるという。つまり変位,変形したおかしな鼓膜になりがちである。このような鼓膜は,また,機能的にもはなはだ不良な状態で,聴力の改善がみられないばかりでなく,なかには悪化するという例もあつて,やがて耳漏の再発を招くにいたつた。これは明らかに鼓膜の形成不全による障害である。
In order to close the tympanic membrane the fascia temporalis is widely used as a grafting material and the results are usually good. However, in some cases problems still exist such as lateral graft healing, thickening of the graft and promontory-graft adhesions. To avoid these problems sliced homograft cartilage may be used in selected cases.
The author presents the method used for preparation of the graft and the technic of the operative procedure with discussions.
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