シリーズ DPCに対応したクリニカルパスの実際
⑧鼓膜形成術
木村 忠司
1
,
磯野 道夫
1
,
村田 清高
1
1近畿大学医学部耳鼻咽喉科学教室
pp.869-874
発行日 2006年10月20日
Published Date 2006/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411100865
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Ⅰ はじめに
現在,医療社会において医療の標準化や医療コストの削減,インフォームド・コンセントのさらなる向上が高まるにつれ,全国的にクリニカルパス(以下,パス)の導入が進みつつある1)。さらに2003年より特定機能病院において包括医療(DPC)が開始され,また医療のIT化が進むにつれて今後もパスの導入が加速するものと思われる。
鼓膜形成術は全身的侵襲が小さく,術後は比較的一定の経過をたどるためパスの導入に適した疾患であるといえる。当院における鼓膜形成術の治療方針は,湯浅法2)や鼓膜穿孔縁より上皮のみを剝離し,上皮と固有層との間に移植片を挿入してサンドイッチ法に近い形として行う場合3)は外来手術とし,通常のサンドイッチ法については,全身麻酔下に耳後部切開によるアプローチで行い,原則的にコントロールホールを開放している。ゆえに当院での鼓膜形成術におけるパスは,サンドイッチ法でのパスとなる。
パスの作成はまずアウトカム(ケアが不要になり,安全に退院できると予期される状態)の設定から始まる。われわれの施設で用いている鼓膜形成術におけるパスのアウトカムは,後の通院が1~2週間に1回程度の来院でフォローが可能な状態,すなわち創部の状態が良好であり,再建鼓膜がほぼ乾いた状態と設定した。またDPCにおいては,包括医療となる入院期間があらかじめ決められており,鼓膜形成術は14日までが包括医療の対象となり,それ以降は出来高払いとなる。ゆえに,DPCに対応したクリニカルパスは,この点も考慮に入れた設定が必要となる。
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